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プロフィール

1933年宇都宮市生まれ。18歳で上京後、秋吉敏子のコージー・カルテットをはじめ数々のバンドへの参加、バークリー音楽大学への留学などを経て、日本を代表するトップミュージシャンとしてジャズの枠に留まらない独自のスタイルで国内はもちろん、世界を舞台に活躍。近年は子供達との音楽交流にも力を入れている他、6冊目のフォト・エッセイ集『笑顔つなげて』が好評を博している。

2001年でミュージシャン活動歴50周年を迎え、同年、2005年日本国際博覧会“愛・地球博”における政府出展事業の総合監督に就任。

新譜『ホイール・オブ・ライフ』は、リチャード・ボナとの共同プロデュースアルバム第2弾にして、自身64枚目の作品となる。

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記念すべき第一回目は、日本を代表するジャズミュージシャンの渡辺貞夫さん。
高校卒業と同時に上京していらい、実に半世紀という時間を六本木でずっと過ごされているという渡辺さんに、
貴重な思い出話などを伺いました。

自分が生活している周りに人がたくさんいる環境が好きなんでしょうね。

僕が上京したのは高校を出てすぐのことだったんですが、従兄弟がちょうど霞町に住んでまして、最初にそのお宅に居候して、そこから僕の音楽生活が始まったんです。当時は飯倉のあたりにいくつかジャズクラブがあったし、日本陸軍の敷地(現防衛庁跡地)が戦後米軍に接収されて、そういったところでよく演奏をしてたんですよ。あの頃は都電が走っていて、六本木はまだとてもひなびた感じの場所でした。夜に仕事を終えて帰ってくると、俳優座横の『楓林』という中華料理屋さんのネオンサインだけが輝いていたのを覚えています。

その後は62年にアメリカ(ボストンのバークリー音楽院)へ留学して、3年後の65年に帰国してからも、まず住む所を六本木近辺で探しました。もともと自分の住んでる周りに人がたくさんいる環境が好きなんですね。それに僕の仕事関係のオフィスも六本木の周辺にありましたし、ほかにライブハウスの『PIT INN』が六本木にオープンした頃は、僕がアドバイスをした関係で定期的に演奏していたり、そのビルの上にはソニーのスタジオがあったりとか、クリエイターの友人連中もこの辺にいることが多かったんです。だから住みだしたら非常にコンビニエンスで今に至るまでずっと動けない。立地としてもタクシーや地下鉄ですぐどこにでも行けてしまうから、僕はいまだにクルマの運転もできないくらいです(笑)。

思い出のお店というと、帰国後はちょうど『キャンティ』がブームになっていた頃で、オーナーの故・川添(浩史)君と知り合ったこともあって、ミュージシャンたちとよく行きました。あと懐かしいのは書店の『誠志堂』さん。六本木交差点のところの店舗と、もう一軒、道の反対側に古本を扱っていた店舗があって、そっちも馴染みの店だったんだけど、交差点の店舗はなくなっちゃって寂しいですね。

『六本木ヒルズ』は、今は観光地として賑わっていますけど、近くに住んでる者としては落ち着くのを待つしかないといった感じでしょうか。1年後、2年後になって今の騒ぎが収まったら、どんな風に変わっていくかが楽しみです。もっと文化的な要素が増えてくれたらいいと思いますね。


今後はゆっくり散策できるような街になってくれたら嬉しいです。

僕は仕事がら旅が多くて、いろいろな国を訪れましたが、特に今はチベットに惹かれているんです。まぁ言ってみれば六本木と対極にある場所というか。ほんとに何にもない、息するのも苦しいような高地です。だから帰ってくると文明の有り難みを感じて、自分が普段いかに傲慢に生きてるかということを思います。六本木だけでなく東京は、何でもすぐに融通がきいて便利だし、世界中の美味しい料理も食べられるしで、大人が仕事をする分にはいいのですが、反面、非常に猥雑で、成長期の子供のためにはやはり環境が良いとは言えない。

だから特に六本木は便利さが一番の取り柄なんですから、それプラス、もっと人が和めるような場所になってくれればいいですね。人間てワガママだから、便利なように便利なように開発して、かえって街を壊してしまう。海外、特にヨーロッパなどはそれぞれの街に歴史ある建物や店があって、街の景色が変わらないですよね。だから何度でも行くたびに懐かしい。先日コンサート会場を探すためにイタリアに行ったんですが、その時訪れた都市のように、緑が多くてのんびり散策できるような、そんな街に六本木もなってくれたらいいです。ま、ここはまるでN.Yのタイムズスクエアみたいな所だから、ちょっとムリかもしれませんが_(笑)。それから希望としてはアーティスト達の溜まり場が欲しいですね。小さなクラブのような、ジャズミュージシャンたちが集まってセッションできるような場所が六本木にできたらいいな、と思います。

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◆◇New Album Relase
『ホイール・オブ・ライフ』
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UCCJ-2026/¥3,000(税込)
そのリズムは大地の鼓動、そのメロディーは木々を駆け抜ける風。
全世界が注目するカメルーンの天才ミュージシャン、 リチャード・ボナとの心温まる共演作。
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